(※注:決定的なものは省いていますが微妙にネタバレがあるかもしれません)
早くも2018年の個人的ベスト漫画候補ができてしまった。
1巻の時点で数々の賞を取っている「月曜日の友達」の2巻、完結巻だ。
ちなみに2巻の帯コメントは糸井重里が書いており、(凄すぎて)笑ってしまった。
他に朝井リョウ(「桐島、部活やめるってよ」「何者」)、amazarashiのボーカル秋田ひろむ等豪華なものだった。
まだ全然頭の中が整理できていないけれど思わず記事作成画面を開いた。
作者の阿倍共実は人間の毒と光を描くのが巧い漫画家さんだと思う。特に「空が灰色だから」や「ちーちゃんはちょっと足りない」は毒の部分が前面に出ていて、私はそれが好きだった。
でも「月曜日の友達」はその毒がかなり控えめ(無いとは言わない)で、光の部分にテーマが当てられていたように感じる。
中学生という微妙な年代の鬱屈感、特別であることへの憧れ、小学生から徐々に"変わっていく"精神、家族へのコンプレックスetc... たった二巻の中に様々なテーマが見出せる。
クラスに馴染めない少年は一向に発現しない超能力の訓練をする。
出来の良い姉にコンプレックスを持ち、子どもから大人へと変わっていく周囲に違和感を覚えている少女は偶然、少年の秘密を知る。
それから二人は共に超能力の訓練をするようになる。
二人が会うのは月曜日、見回りの先生がいない夜の学校の校庭でだけ。教室や登下校では言葉を交わすことすらない。
馬鹿馬鹿しくて、下らない行為だけど、それでも世界に馴染めなかった二人にとって、互いに夢のような時間になっていた、というところまでが1巻。
完結巻の2巻では二人や周囲の関係に大きな変化が訪れる。
ぜひ読んで確かめてほしい。
本作のテーマは、少年のこの発言に集約されているように感じる。
俺は忘れることはないだろう。
この一年のことを 今日のことを 月曜日の夜のことを。
時間は止められなくてもこうして思い出に残すことはできる。
季節の空気や気温が、音やにおいが体温が、この肌にふれた感触が、しおりになって思い出を起こす。
今までの阿倍共実作品は、持たざるものと持つもののどうしようもない断絶だったり、絶望的な現実に立ち向かうことができない故の肥大した妄想だったりと、救いのない世界が多かった(それはそれで愛おしさを感じるほどに大好きなのだけれど)。
今作も、安易なハッピーエンドではないかもしれない。
登場人物たちはみんな、進む未来の方向が異なっていることに中学生ながら気付いている。
夢のように惹かれあった二人の世界も、一瞬の夢でやはり終わってしまうのかもしれない。
それでも、今までの阿倍共実作品には無かった、希望を覚える余地のある幕引きだったと思う。
精神のコンディションによってはボロボロ泣くという確信がある。
何度も、何度も読み返したい。
こちらもおすすめ
www.gith.xyz