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第160回芥川賞を受賞した『ニムロッド』ってどんな話?【ビットコインがテーマ?】

芥川賞 ニムロッド

第160回芥川賞を受賞した『ニムロッド』ってどんな話?【ビットコインがテーマ?】

第160回芥川賞を受賞した上田岳弘氏の『ニムロッド』について、文学部出身の立場から若干のネタバレを含めて簡単な紹介や個人的考察を書いていこうと思います。

www3.nhk.or.jp
 

 

「ニムロッド」とは

タイトルの『ニムロッド』ですが、主人公中本の同僚・荷室仁のあだ名としてこの名称が登場します。

また、作者の好きなPeople In The Boxの曲名「ニムロッド」(Nimrod)に間接的に由来しているようです。
 
 
ニムロッド(ニムロド)は旧約聖書に登場する人物で、ダンテの『神曲』にも巨人の姿で登場します。

People In The Box以外にもGREEN DAYのアルバムタイトルになっているなど、比較的ポピュラーなモチーフです。

ニムロッド

ニムロッド

  • People In The Box
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

Nimrod

Nimrod

  • Green Day
  • オルタナティブ
  • ¥1600
 
 

作者について

筆者の上田岳弘ってどんな人? ということでまずはWikipediaから来歴を引用します。

兵庫県明石市出身。早稲田大学法学部卒業。大学卒業後、法人向けソリューションメーカーの立ち上げに参加し、その後役員となる。
 
2013年、「太陽」で第45回新潮新人賞を受賞しデビュー。
 
第28回三島由紀夫賞の選考において、又吉直樹著『火花』(第153回芥川龍之介賞受賞作)との決選投票の末に、「私の恋人」への授賞が決定]。
 
朝日新聞紙上での松浦寿輝と鴻巣友季子との対談「ノーベル賞を語り合う」において、両氏が上田の名前を挙げ、中でも松浦は「卑近な現実から離陸して、観念の高みまで想像力を飛ばそうという意気込みが感じられ」るとし、その作風を評し「新超越派と名付けた」ことを明かした。
 
2016年、国際文芸誌〈Granta〉日本語版にて「Best of Young Japanese Novelists 2016」に選出される。
 
2017年、小説「キュー」を、雑誌「新潮」とYahoo! JAPANスマートフォン向けサイトで同時連載開始。
 
2018年、第68回芸術選奨新人賞受賞作『塔と重力』を原作として、オフィス3〇〇40周年記念公演『肉の海』(脚本・演出:渡辺えり)が本多劇場で上演される。
 
2019年、「ニムロッド」で第160回芥川賞を受賞。
 
上田岳弘 - Wikipedia より

 
 
新潮新人賞から文壇に足を踏み入れたいわゆる純文学作家でありながら、スマホサイトで作品を連載するなど実験的な試みを行っている異色の作家です。
 
 
また引用中の「新超越派」について(明確な定義はわかりませんが)、十九世紀前半に興った「超越主義」というものがありまして、これは有限存在中に神の内在を認めつつ個人主義の立場を取るようなものです。
 
またカントに端を発する「超越論哲学」というスタンスもあり、"「人間の適正な理性的認識は、どこまで可能なのか」「人間の理性は、経験を超えた(先験的な)「超越的」真実在(すなわち物自体)と、どのように関わるべきなのか、関わり得るのか」についての、境界策定・基準設定(メタ規定)を行うことで、「超越的」なものに対する考察・関与(すなわち形而上学)の余地を、適正な形で復興しようと試みた。これがカントの「批判哲学」であり、「超越論哲学」(先験哲学)"であるとされています。
 
超越論哲学 - Wikipedia より
 
これらから、松浦寿輝と鴻巣友季子両氏からも超越的な存在(≒神)が作品に内在される作家として認識されているようです。
 
 
上田氏は影響を受けた作品に村上春樹の『風の歌を聴け』ガルシア・マルケスの『百年の孤独』をあげており、魔術的リアリズム(マジックリアリズム)等の影響下にある作家であることも伺えます。

春樹もマルケスも、日常と非日常(超常存在や伝承・神話など)が地続きで溶け込んでいるような作品を多く手がけており、個人的にはこの『ニムロッド』にも近しい文脈が感じられます。
 
 

『ニムロッド』のテーマはビットコイン?

主人公の名前がビットコインの提唱者ナカモト・サトシ(中本哲史)と同名であり、サーバーの保守業務を行う企業に勤める中本がビットコインのマイニングに携わる業務を命じられるところから物語が始まることから、多くのプレスやニュース記事では「ビットコイン(仮想通貨)をテーマにした作品」であると紹介されています。
 
 
※参考:日本語で読むビットコイン原論文 [by Satoshi Nakamoto]
coincheck.blog
 
 
もちろん「ビットコイン(仮想通貨)」それ自体は主人公の名称などからテーマのひとつとしてあることは間違いないと思うのですが、しかし、「仮想通貨小説である」とまで言ってしまうと趣旨からずれるかな……と個人的には感じます。
 
 
ビットコインやブロックチェーンといった技術に触れることをきっかけとし、恋人や同僚との関係性を見つめ直し、「個の代替可能性」や「人類の行く末」といったところにまで思考が拡がっていくことが本作の主題じゃないのかなあと。

個人的なイメージとしては、中本の思考の行き着く先はエヴァンゲリオンの旧劇(まごころを、君に)のような印象を受けました(実際そういう展開になる、という意味ではなく)。
 
 

ニムロッドに対するTwitterの反応


 
 

ニムロッド まとめ

先月にぱらぱらと群像を立ち読みしただけなので正直まだ全然考察はできていないのですが、芥川賞を受賞とのことで特に興味深い作品だったため記事にしました。

ダブル受賞となった『1R1分34秒』とあわせて、のちほど書籍版でじっくり読み直したいと思います。
 
 
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